To Far Away Times

間接的自己紹介

オーディン

前の記事で、好みのタイプは無いと書いたが、よくよく考えれば少しくらいはあることに気づいた。よくよく考えれば気づくことって、ままある。嘘をついているわけではなく、後になって気づく。荒木飛呂彦も言っていた。大人は嘘をつくのではなく、間違うだけなのだと。

そんなわけで、すばやさの上がる魔石(SFC版)を即答できる人が理想のタイプだと今までずっと言ってきたことを思い出した。そういう女性って、とても素敵よね、と。でもそれはきっと、他のいろいろな部分が自分と噛み合った上での最後の決め手みたいなものなのかもしれないと思った。あらかじめ好きな人に対して、この人がすばやさの上がる魔石を即答できたらもうそれは言うことない、完璧だという感じで。白馬に乗った王子様が家庭内暴力を振るうなんてことは誰も予想だにしないように、オーディンと答えられる女性は他になんの欠点もない、ということだ。でも当たり前のことだが、オーディンと答えられる女性はこの世に1人ではないだろう。そしてその女性たちはみんな違う女性なのだ。清楚な人もいるだろうし、荒くれ者もいるだろうし、清楚な荒くれ者もいるだろう。それなのに俺は、オーディンと答えられる女性に対してありったけの理想をぶっつけているわけだ。

でもそう考えると、理想のタイプを一言で表す場合、その他の理想もそこに自ずと含まれてしまうのかもしれない。ただそれは、俺が他人から聞く時に気をつければいいことだ。相手は白馬に乗った王子様が好きだと言っているが、それはきっと家庭内暴力を振るわない人で、家事もしっかりやってくれるけどちゃんと私のルールに沿ったたたみ方や洗い物をする人じゃないとダメ、というのも含まれているんだろうなと。

しかし白馬に乗った王子様は度を超えて優しいだろうから、地面がアスファルトで覆われたこの現代社会では馬の蹄のことを気にして街中で乗ったりはしないだろう。大邸宅にとてつもなく広い草原があって、そこで早朝に白馬とコミュニケーションを取るだけだ。昼間は公務があるし、夜は舞踏会に出なくてはならないから、馬と親密になれる時間は朝しかかないのだ。しかし白馬の王子様は白馬に対して、アスファルトだらけのこの世界で自由に走り回らせられなくてごめんな、とは言わない。早朝に草原で束の間のコミュニケーションを取るだけで、白馬は満足し、恍惚の表情を浮かべるのだ。王子様と触れ合っているだけで、乗馬してもらうだけで、日頃の寂しさは消え去ってしまう。昼間は王子様のことを思いながら草を食べたり原っぱを走りまわったりして、夜は王子様のことを思いながら眠るのだ。