To Far Away Times

間接的自己紹介

ジジイ

腰の曲がったジジイが前をゆっくり歩いている。背は丸まり、歩幅は狭い。ほどなくして動く歩道に差し掛かる。動く歩道では、歩かない人々は左に、歩く人は右側を行くのが暗黙の了解だ。地域によって異なるらしいが。俺は当然のように、ジジイは左に寄って立ち止まるだろうから、右側から追い抜こうと考えていた。しかしジジイは右側を行った。俺は思った。ジジイ、その道を行くのか…、ついて行くぜ。わりに長い動く歩道。ジジイは我が道を行く。ドラクエでは防御力の低い魔法使いは後ろに据えていた方が良いが、俺はこの時、背後にも敵からの攻撃を防ぐために戦士や武闘家を配置するべきだと思った。バックアタックはなんとしても防がねばならない。ゲームと現実は違うのだ。奇襲にあったらこのジジイはひとたまりもないだろう。俺は備えた。ジジイの背後は俺が守る。ジジイから離れずに周囲の気配を探る。幸い動く歩道の終点まで敵の攻撃は無かった。動く歩道を降りた俺は、そそくさとジジイを追い抜いて家路についた。