To Far Away Times

間接的自己紹介

私たちは今、ここでこの瞬間に考えなくちゃいけないのよ。

イヤホンをポッケに入れたまま洗濯をしてしまった。乾いたズボンの中から出てきた乾いたイヤホンは魂まで干からびていた。Bluetoothのイヤホンを、生きているか確かめるべくペアリングを試みる。うんともすんとも言わない。そのカナル型のイヤホンの右側はゴムが外れ、スピーカー部分のあみあみも外れていた。浸水は免れなかったのだろう。スイッチが入らないことを知るや否や、その死骸を捨てた。そして新たなイヤホンを探すためにネットの海へと漕ぎ出したのであった。

自分はレズビアンなんじゃないかと思うことがままある。理由は大きく2つあって、1つは自分のことを女の子なんじゃないかと思うところ、もう1つは恋愛対象が女性である、というところである。女の子が女性を好きになる。これってレズビアンになりませんか?後者については言うまでもないことだが、前者について何故自分が女の子なんじゃないか、と思うかというと、これはなかなか言葉にするのが難しい。難しいというのは、オブラートの包み方が難しいということだ。オブラートというとボンタンアメを想起する。

しかしイヤホンを無くしたことで決定的事実にぶち当たったのだ。ネットの海に漕ぎ出した俺は、Bluetooth対応のカナル型イヤホンを調べていた。「イヤホン 耳が小さい」検索窓に打ち込む。そう、俺は耳穴が小さいのだ。カナル型のイヤホンを買うと、SMLの3サイズのゴムがついてくる。耳にはめる部分のゴム。Sでもちょっと大きい感じがする。様々なイヤホンおすすめ記事を見ていると、女性は耳が小さいという記事がちらほら目に入る。ここで思ったわけだ。そうだ、やっぱり耳の小さい俺は女の子だったんだ、と。これからは一人称を私かあたしにしようか。俺っ子はタイプではない。でも私はともかくあたしはやりすぎなんじゃないかと思う。私と書くと男女どっちかわからないけど、わたしって書くと女っぽいよな。さすがひらがな。その為に生まれてきた感がある。いやしかし俺っ子はタイプではない、というのと、俺が俺を使うのは別の話だ。別に自分を好きになろうと思っているわけではない。耳が小さい。だから女の子である。キューイーディー。しかし耳の穴の大きさ以外ににも思い当たる節はいくつもある。ボンタンを穿くよりロングスカートを穿きたい。靴は今のままでいいや。ヒールのある靴はあまり穿きたくない。いやー、でも穿きたくなるかもなー。なってみたらなー。あとはお化粧もしてみたい。初めは下手っぴだろうから、誰か本物の女性にばっちりメイクをして欲しい。その為には髭が邪魔。この期に及んで女の子になっても今の髭だけは維持されてると思っているらしい。歪な想像力である。鼻から下の体毛全部いらない想像をする。いや、陰毛は欲しい。絶対かわいくなると思うんだけどなー。身長も149くらいになりたい。

しかし女の子になりたいといっても、なんでもいいわけじゃない。かわいい女の子になりたいのである。なかなかわがままである。もし神様がいるなら(いないと思う。それについてはまた今度)、流石の神様もわがままオーダーのフルコースに辟易してしまいそうだ。生理はなかなかしんどそうだけど、かわいい服を選んだり、いい匂いさせたりしてみたい。でもよく考えてみると、俺が超絶かわいい女の子になったとしても、やってることは変わらなそうである。毎日FF 14して、たまにスプラトゥーンをやる。休みの日は部屋に篭りっきり。しかしたぶんお肌のケアは今よりするだろう。乳液?上等だよやってやろうじゃねえか。

よく、たらればの話で、モテないと嘆く人への言葉として「自分と付き合える?」というものがある。お前みたいなやつと付き合おうと思える人がいるか?自問しろよ、ということだ。俺もそれを聞いた時は、確かに、俺は俺とは付き合えないなあと思ったものだ。しかしよく考えると、俺はホモではない(レズではあるかもしれない)ので根本からその質問は間違っていることに気づく。ではもし俺が俺のタイプの女の子だったらどうだろう。これは付き合える。気持ち悪いと罵声を浴びせられるかもしれない。しかし謙遜というか自分を卑下する気持ち抜きに話をするなら、好みや嗜好が同じ分、筋の通し方が同じ分、だいぶ楽だとは思う。価値観が同じというのは大きなアドバンテージでもあるだろう。特に自分大好きなわけではない。なにも自分のことが一番好き、といっているわけではない。むしろ変えたい嫌な部分はいっぱいある。しかしそこは受け入れることができる。何故なら自分と同じ考えだから。共依存ずぶずぶで死ぬかもしれないけど。でも大事なのは、この質問への回答と実際の色恋とを関連づけてはいけないということだ。他人は自分を映す鏡とはよく言ったものだが、他人に自分を求めてはいけない。つまり、「自分と付き合えるか?」という質問はなかなかに的外れなものだということだ。上手いこと言ったつもりでただ相手を馬鹿にする一言に過ぎない。お前みたいなブサイクと誰が付き合うのか、と。いや、逆もあるかも。俺みたいなブサイクと付き合うなんて無理だよ、お前みたいなイケメンは自分と付き合えるんだろうなあ、というような。ないか。ないな。この、ないな、という判断が、俺の生きてきて育んできたこの支離滅裂な価値観なのである。少し不憫である。自分がかわいい女の子だったら、男どもをたぶらかし弄んで、本命は美人なお姉さん。そんな妄想をしつつ今日も終わっていくのであった。